動画像データは放射線領域の静止画像データと同様にDICOMによる標準化が進んでいるため、IHE を利用しやすい環境下にあります。 一方波形データは、現在までのところ、波形 データの標準化の国際的普及は遅れており、PDF、SVG などの画像データ(紙の心電図を画面に表示したような画像データ)として取り扱われています。そのため、比較表示が煩雑であるという問題とともに、元来波形データであるにも拘らず保存時に画像データとして扱われるために、波形そのものの解析ができないという本末転倒した不便さが生じています。
また、これら画像検査や心電図検査の施行時に、運動負荷あるいは薬物負荷が頻繁に行われることは循環器領域の大きな特徴です図19。
上述の特殊性に鑑み、われわれは以下の6項目についてワークフローの作成に着手しています。将来的には、日本で検討が開始された波形情報、血管内画像診断などについても、国際的に用いられるプロファイルとして完成することを目標としています。
また、循環器領域では意識不明の氏名不詳患者に対する心臓カテーテル検査と治療を施行する場合があり、通常のワークフローであるSWF に加えて、事後に患者氏名等が判明した場合の患者情報修正ワークフローであるPIR を最初から加えて、統合プロファイル CATH としています。SWF、PIR、ITI/CT の各項についての詳細は放射線領域の項をご参照ください。
●1 PDF、SVG を利用した基本的な表示
PDF、SVG自体は世界で広く利用されている画像データ形式であり、各社機器から発生したこれらの形式の心電図画像を1つのサーバで保管し、検査ごとの履歴として管理しています図20。利用者は WEBブラウザで履歴一覧画面を表示し、必要な心電図履歴を選択することで画像形式での心電図波形を閲覧することが可能となります。
●2 MFER(日本版標準規格)を利用した多様な表示
日本版 IHE であるIHE-J では 既にISO/TS11073-92001として国際規格であるMFERを採用しています。 波形データの標準規格を採用することによるメリットは、画像データではなく波形データとしての保管が可能となるため、 経時比較表示が可能となり、心電図波形解析ツールなどの利用が可能となります図21。MFER は今後、日本発の世界標準規格として期待されています。
現在IHE-J循環器委員会では、これら課題を克服すべくユーザービリティーの良いプロファイルの作成を行っております。 また、本診断法は日本が世界的にも最も使用頻度(対 PCI)が高く、標準化に向け世界に先駆けて活動を行っていきます。
●1 計測結果管理(ED-CARD)
循環器領域では心エコー画像や心血管造影画像では画像情報のみならず、画像解析を行った結果得られた数値情報が診断、治療指針の決定に大きく寄与しているという 特徴があります。そこでその解析結果をレポートシステムやデータベースシステムへ電子データ(テキストデータ)として送信することを可能とする統合プロファイルの開発を検討しています。これにより解析結果の手作業による転記の手間を省くことが可能となります図22。
●2 データハンドリング
循環器領域では多施設共同研究や学会主導の全国調査など、大規模な研究や調査が盛んに行われています。また、北米やヨーロッパでは国が主導するナショナルデータベースが構築され、登録が義務付けられている国があります。しかし、本邦では施設内のレポートシステムやデータベースシステムから、外部のデータベースへ情報を伝達するワークフローや技術が標準化されていないのが現状です。IHE では外部データベースへの情報伝達技術を標準化することで、施設内システムと外部データベースへの重複入力の負担を軽減することを目指しています。