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第I編 事業概要
6. 相互運用性への取り組み

埼玉医科大学における相互運用性の取り組みは、相互運用性、特にIHE-Jに関わる全国規模で展開される活動のうち、できる限り実装し、実証可能な技術に焦点をあて、現実的に運用できるものに絞っている。それでもやはり、実装の段階では解決すべき課題が多くあることはここまでに示した通りである。

そういう意味においては、現在のIHE-Jにおける活動の一部は実装レベルに到達していないものである。もちろん、IHE-Jが放射線部門で先行して策定され、徐々に横展開という形で臨床検査、病理、内視鏡、循環器、等、他の領域における検討に進んでいる構造から考えるとこの事実は本質的なものであり、問題点というには適切でないかもしれない。

しかし、IHE-Jが現在あるように認知されてきて、IHE-Jの特長に鑑みてシステムを構築したいと希望する医療機関やベンダにとって、実装上の課題が残っていることは小さからざるネックになることは否定できない。

このような制約条件のもとでも、埼玉医科大学において放射線部門に限定した実装は大きな作業進行上の問題もなく実現され、臨床稼動していることは重要な意義があることと考えている。

つまり、病院全体のシステムの姿という意味では全体のうちの一部であっても、その部分で完遂するものでさえあれば、今後のIHEおよびIHE-Jの活動に期待するという条件付で、IHE-Jの導入を積極的に考えてもよいと結論づけうると思われる。

リアル・ショウルームおよびバーチャル・ショウルームはこのような存在意義をもって構築された本大学の放射線部門システムの情報をできるだけ多面的に発信することによって、IHE-Jにおけるシステム構築をするということが、現実問題としてどのような作業であり、その病院の情報システムにどのような作用を持つ可能性があるのか、また、将来的にどのようなメリットや拡張性をもつ見込みをもてるのか、ということが知れることが重要であり、それこそがわれわれの運営するリアル、バーチャルの二つの構成要素を持つ情報発信の最大の意義であると考えている。

さて、今後の相互運用性あるいはIHE-Jの普及のために、ショウルームでの発信はどのような展開が必要であるかについて今一度整理しておきたい。

ショウルームは、IHE-Jによるシステムの実現を考える医療機関が、(1)IHE-Jの導入によって将来どのような診療上および医療経済上の効果があるか、IHE-J自体の今後の進化を含めてどのような将来的拡張性を保有できるであろうかという点について理解でき、また、(2)現実にIHE-Jを用いてシステムを構築するときの具体的な手順や経費等のイメージができる情報を十分に提供すること、の二点が必要と思われる。

そのために、われわれのような先行施設における情報蒐集および開示の仕方についての努力が必要であるとともに、関連するベンダ、学識経験者によって、形式論が許す範囲にとどまらない現実的な情報提供をすることが望まれると考える。

特にショウルームによる情報発信においては、継続性はきわめて重要である。IHE-Jのことはこのサイトを見ればよい、というような現実的情報の情報源としての位置を獲得するように努めることは大切だが、ある意味でそれは容易である。情報を求める側がどのような情報を必要としているかに注意を払って適切なタイミングで、できるだけ広く情報開示をすればよいからである。

しかし、この類の情報発信の仕組みが構築されても、これを維持することは意外に難しい。今回の事業のように、一定期間については構築および運営に関わる費用が確保できる場合、その期限を越えて継続した情報発信を可能にすることは、現在の医療機関からの情報発信のありようを考えると一工夫必要になる。すなわち、医業収益に直截には結びつかない本事業のようなサイトを支えるには医療機関側に相応のモーティベーションが必要となるということである。

この点を上手く解決する工夫を以って、できる限りコンスタントかつ永続的な情報発信が出来るように努めたいと考えている。