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IHEとは:放射線領域

放射線領域の統合プロファイル

IHE 放射線部門のテクニカルフレームワークは、1999年から開発が行われ年を追う毎に進化してきています。特に近年では、マンモグラフィーやフュージョン画像などの特徴的な分野への開発が進んでいます。また、既存の統合プロファイルの改修を行う傾向もあります。放射線領域では、22の統合プロファイルが定義されています図7
各々の統合プロファイルが対処する臨床的問題および、関連する情報・画像処理システムの一般的カテゴリーについて簡単に説明しましょう。
放射線 統合プロファイル (業務シナリオ)一覧
【 図7:放射線 統合プロファイル (業務シナリオ)一覧】

予約済みワークフロー(SWF:Scheduled Workflow)

統合プロファイル SWF は、画像診断部門で一般的に行われているワークフローを実現するシステム連携をサポートしています 。 医療情報システムへの患者情報登録から、オーダ発行、スケジュール作成、検査実施、画像収集、保存、表示、レポート作成の間で患者情報を維持するための トランザクションを指定した基礎となるプロファイルです図8

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●患者情報登録システム [ADT]
●病院情報システム : HIS(オーダリング)[OP]
●放射線情報システム : RIS [OF]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

予約済みワークフロー(SWF)
【 図8:予約済みワークフロー(SWF)】

患者情報の整合性確保(PIR:Patient Information Reconciliation)

統合プロファイル PIR はSWF の拡張版で、救急等で撮影した身元不詳患者の画像に対して、事後に対象患者に受診、オーダ歴があることが判明した際に、 撮影済み画像の患者情報を修正するプロファイルです図9。上位システムの患者情報を修正することで、下位システムの情報も全て修正が可能となります。 この他にも結婚、新生児など姓名が変わった事にも事後照合できます。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●患者情報登録システム [ADT]
●病院情報システム : HIS(オーダリング)[OP]
●放射線情報システム : RIS [OF]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

患者情報の整合性確保(PIR)
【 図9:患者情報の整合性確保(PIR)】

画像表示の一貫性確保(CPI:Consistent Presentation of Images)

統合プロファイル CPI は、モノクロ画像の表現と表現状態情報(アノテーション、シャッター、回転、表示領域、拡大)の一貫性を維持する機能を実現するプロファイルです図10。読影者が確認したウィンドウレベルなどの表示状態の保存が可能で、その表示状態は診断用ワークステーションでの画像表示やフィルム、紙媒体でも維持されます。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●画像観察、診断用ワークステーション
●画像表示装置 [ID]
●各媒体(フィルム、紙)などへのハードコピー画像作成システム
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

画像表示の一貫性確保(CPI)
【 図10:画像表示の一貫性確保(CPI)】

キー画像ノート(KIN:Key Image Note)

統合プロファイル KIN が指定するトランザクションによって利用者は画像検査にメモを添付することができ、検査結果の重要な画像(1枚または複数)を示すことができます。このメモには、添付目的を示すタイトルとユーザーコメント欄があり、このプロファイルをサポートするシステムの間で画像が移動するとき、メモは適切に保存・保管・表示されます。利用者は、さまざまな目的で画像にキー画像メモを添付できます。例えば、紹介医師 の連絡先・ティーチングファイルの選択・他部門の助言・画質の問題などがそれにあたります図11

このプロファイルに関係するシステムは部門の画像処理システムと医療機関全体の画像分散システムで、次のようになります。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●診断レポーティングワークステーション
●画像表示装置 [ID]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

キー画像ノート(KIN)
【 図11:キー画像ノート(KIN)】

可搬媒体による画像データ交換(PDI:Portable Data for Imaging)

統合プロファイル PDI は、CD-R等のメディアに記録された画像および診断レポートのインポート、表示、または印刷を確実に実行できるようにすることを目的としています。このプロファイルでは、メディアで診断および治療に関する情報を配布するためのアクタとトランザクションを指定しています図12

関係するシステムは可搬媒体への書き込み、読み込みを行うために次のようになります。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●可搬用画像書き込みシステム [PMC]
●可搬用画像読み込みシステム [PMI]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

可搬媒体による画像データ交換(PDI)
【 図12:可搬媒体による画像データ交換(PDI)】

メディアインポートの整合性確保(IRWF:Import Reconciliation Workflow)

統合プロファイル IRWF は、他施設から持ち込まれた可搬媒体(CD、フィルム等)内のデータを自施設のシステムに取り込み、保存します。

前提条件として患者情報が取り込みを行う施設のシステムに登録されていること。取り込みはHIS・RIS で予めオーダを発行する方法と医事システム、HISに患者情報を問い合わせて情報を取得して取り込む方法とがあります。 オリジナルの情報を残し、自施設での運用に適応した情報に書き換えることを可能にしています図13

関係するシステムは可搬媒体への書き込み、読み込みを行うために次のようになります。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●可搬用画像書き込みシステム [PMC]
●可搬用画像読み込みシステム [PMI]
●病院情報システム: HIS(オーダリング)[IM/IA]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

メディアインポートの整合性確保(IRWF)
【 図13:メディアインポートの整合性確保(IRWF)】

乳房画像(MAMMO)

統合プロファイル MAMMO は、効果的・効率的な診断のための画像表示とハードコピー機能を定義しています。

マンモグラフィーは画像のデータ属性が医療機器メーカー毎に異なり、一般的な画像表示レイアウトが適応しない特異性があります。 また、専用のワークステーションで用いられる表示処理機能やCADを含むワークステーションとの組み合わせで診察するなど、相互運用可能なデータオブジェクトをサポートします図14

このプロファイルに関係するシステムは部門の画像処理システムと医療機関全体の画像分散システムで、次のようになります。

< 関係システム [ アクタ名 ] >
●病院情報システム: HIS(オーダリング)[IM/IA]
●診断レポーティングワークステーション
●画像表示装置 [ID]
●モダリティ[Aq.Modality]
●画像管理保管システム : PACS [IM/IA]

乳房画像(MAMMO)
【 図14:乳房画像(MAMMO)】

放射線領域のその他のプロファイル
統合プロファイル 略 語 解   説
放射線科情報へのアクセス ARI 他の部門から放射線科の情報(画像、読影レポート等)にアクセスするための手順を規定した統合プロファイル。
監査証跡とノード認証 ATNA ノード(実装されている装置)間の相互認証を行い安全性を維持する。個人情報に関わる監査証跡を残す。
会計処理 CHG 部門システムのスケジュール管理(オーダ受け)システムと医事会計器(Charge Processor) の間で情報を交換する。
エビデンス文書 ED ワークステーション、撮影装置で作成される測定結果などの非画像情報、例えば診断の根拠となる情報を生成、保存する機能。
フュージョン画像 FUS 複数の機器から画像を収集し、レジストレーション、ブレンドによって融合された画像の表示を行う。
核医学画像 NM 投与された放射性物質 (RI) の体内での分布やこれをトレーサとして測定した代謝量、血流量を表す画像。
後処理ワークフロー PWF 検査画像に対する各種の画像処理などの後処理のワークフローである。CT画像データなどの3次元画像処理などが想定されている。
複数検査手続きの一括撮影と表示 PGP 複数検査手続きを一括撮影し、表示の際には手続き単位にできる仕組みを実現した統合プロファイル。
報告書ワークフロー RWF 報告書にまつわる業務の流れを 13 のユースケースに基づき記述している統合プロファイル。他の統合プロファイルと連携・整合を保つよう工夫されている。
画像・数値を含む報告書 SINR DICOM SR 規格に基づく報告書作成のための統合プロファイル。報告書は正式の診断報告書に入力することができるので、情報の再入力が避けられる。
教育・臨床トライアル用データ出力 TCE 臨床データから匿名化を行い教育用・臨床トライアル用のファイル出力を行う。
施設間画像データ共有 XDS-I 医療施設間で画像データを共有する仕組みを提供。インデックスをレジストリで保存、リポジトリで画像本体を保管し画像データソースの所在管理を行う。
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