本事業では、急性期に重点を置いた地域の中核病院である当センターにおいて、昨年度からIHE-Jの仕組みを用いて安定動作している放射線部門システムが、より完全な形のIHE-Jガイドラインに基づいた構築をできた結果として、安定して稼動している点に大きな意義がある。
この事業が、実際の医療機関で稼動しているシステムの構築を実現し、その中で、現実的な構築上の課題を整理することに寄与していることは重要である。問題点は医療機関に存する問題、ベンダに存する問題の夫々を区別して理解し、また、そうすることによってIHE-Jの規定そのものに依拠する問題が、明確な形で浮き彫りにされることは大きい。
特に、IHE-Jガイドラインの規定が、その粒度を含めて十分であるかどうか議論があったレポートシステムに関係するReport Workflow (RWF)プロファイルに関わる今年度の実装では、IHE-J委員会における同プロファイルの検討作業の結果を踏まえ、いくつかのユースケースについて、実稼動システムの挙動を明らかにする情報を提供することができたため、プロファイルの有効性が早いサイクルで可能になったことは一つの意義であった。
同様に、IHE-JのPortable Data for Imaging (PDI)プロファイルおよびWeb Access to DICOM Objects (WADO)の実装についても、多くの実際的なプロファイルへの実装の要件の整理ができたことは意義深い。
以下はリアル・ショウルームおよびバーチャル・ショウルームの機能に関して述べることとする。
本事業では、各プロファイル、トランザクションを実装に反映する段階で、現実的に生起する齟齬を解決するために、ベンダ間、およびベンダと医療機関の間において必要とされた細部の確定作業に関する軽減の程度をできるだけ詳述することができた。
これらの事項については本報告書の本編にも詳らかではあるが、リアル・ショウルームでは実際に構築されたシステムを各コンポーネントにおいて実際に挙動を詳しく見ながら見学していただけるだけでなく、これまでの構築上の問題や、今後見学者の施設において新たにIHE-Jを導入していく場合の進め方や留意点などについて、現実的な情報提供が可能な状況を設けてある。この情報提供においては、実際に本事業の構成、実装作業に深く関わった本センター職員があたることができる。IHE-Jを実に体験することができる施設として、単なる受身の見学だけでなく、能動的な情報収集を可能にしたことに今回の事業の焦点を置けたことは収穫であった。
同様に、バーチャル・ショウルームについても、リアル・ショウルームと同等以上の有用な情報を提供することができるようになっている。重要なこととして、本リアル・ショウルームはmovable typeのbogシステムを用いていることがある。すなわち、このシステムの利点として、本事業の時間的範囲内だけでなく、今後、インターネットサイトの構築、運営については必ずしも専門的知識を有さない当センターの職員でも、容易に掲載情報の更新を行うことができるのである。このため、バーチャル・ショウルームサイトにおいて、簡単に正確かつ鮮度の高い情報を発信する仕組みが完成している。これが今後のIHE-Jを使用した実装が全国各地の医療機関で行われる際に大いに役立つことが期待できる。