5.4.1 本実証により判明したこと
本事業の実施にあたり、ベンダ間で調整した事項や実施後に判明した事項は以下の通りである。
(1) DICOMタグの(0008,0100):CodeValueを利用したDR装置のプリセットメニューへの検査情報マッピングについては、Order Filler側から送り出すJJ1017コード一つに対して、Acquisition Modality側のプリセットが、事実上特定される必要があるが、JJ1017コードの数とAcquisition Modality側にプリセット可能なコードの数があまりにも異なる(Order Filler側に設定された透視関連のJJ1017コードが、数十に対し、プリセットテーブルの運用数が十程度となる:設定可能数ではないことに注意)ため、結果的に本テーブルの対応はN対1となることが判明した。
(2) Order Filler側で複数のJJ1017コードが括られている(JJ1017-16Pによる検査オーダの括り)場合、(0008,0100):CodeValueが複数到着する可能性がある。本実証における動作として、Acquisition Modality側の仕様であるが、JJ1017コードの2値目以降は無視される事が判明した。つまり、検査途中に別の撮影指示を送信しても、同一オーダである場合は、一番初めに連携したオーダのみが有効となる。
(3) (0008,0005):特定文字集合の連携において、仕様の違いから、接続試験時に不具合が発生した。これは、Acquisition Modalityの仕様として、第一要素にIR-6が明示された場合、第二要素のIR-87が認識できず、第一要素による文字セットを適用するため文字化けが発生するとの内容であった。対応としては、MWMサーバ側で第一要素を省略したが、第一要素の扱いについて、明確な規定が必要かも知れない。
5.4.2 本実証の考察
本事業のベンダ(東芝メディカルシステムズ株式会社)からの報告に、以下の記載がある。
「将来的にはIHE-Jの指針に基づいて、DR装置に関わるJJ1017コードと、DR装置固有の検査名とが工場出荷時にデフォルト設定として組み込まれることとなる。」
医療の標準化は別にして、Acquisition Modalityにおいて、この様な思想が表明されることは、JJ1017などを利用した標準的マスタの構築において、心強い限りである。
特に、情報連携上最も重要なファクターである、Acquisition Modalityの大多数が、この様な思想に基づき仕様の改善を行うことで、標準的マスタ採用に向けた訴求力が高まり、相互運用性の実現に近づくものと考えられた。
5.4.3 事業成果から期待される効果
HIS, RIS, PACS −モダリティ間 予約, 会計, 照射録情報連携 指針バージョン3.0は、名前の通りAcquisition Modalityまで連携することを前提に考えられた指針で、そのコード値は、DICOM-MWMによる連携が可能な構造となっている。
Acquisition Modalityにおいて、JJ1017の利用が実現されれば、Order PlacerからAcquisition Modalityまで単一のコード値による運用が実現し、相互運用性が増す上に、Acquisition Modalityは、オーダ内容に添ったプリセットの呼び出し等、検査開始までの操作手数が減少・自動化することで、安全性や効率化が図られるものと期待された。
また、将来的にはMPPSによる線量管理や依頼情報と実施実績の対応実現など、多くの連携利用が見込まれる。
本事業の実施により、JJ1017における有用性の証明や接続運用における問題点の把握が行えたと考えている。