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第I編 事業概要
1. 背景

近年、多くの医療機関で情報システムの導入が進んでいるが、導入時の仕様策定にかかる労力や、異なるベンダ間・システム間の接続における情報連携のための調整作業は、依然として減る様子を示していないのが現状である。
そのような中、本事業は、IHE-Jガイドラインの採用により、たとえマルチベンダ下のシステム構成においても、仕様策定などにかかる作業を効率化し、利便性や情報の円滑な連携を損なうことなく、一定の相互運用性が確保可能であることをこれまでのシステム構築で実証してきた。
また、本事業では、多くの医療機関が情報システムを導入する上で、IHE-Jガイドラインの採用を検討しやすいように、実証の成果や構築に至るまでのノウハウを、可能な限り公開すると共に、積極的な情報発信を行ってきた。
これまでに実施された事業の具体的成果をまとめると、以下の通りである。

  1. 国内で初めてIHE-Jの手法を用いて、マルチベンダにおいても一定の相互運用性が確保された、放射線領域を中心とした部門システムを実際に稼動させ、IHE-Jガイドラインの有用性を示すことができた。
  2. 「IHE-Jガイドラインの採用により相互運用性が実現された実稼動しているシステム」を実際に見学可能な設備や受け入れ態勢を整備することで、IHE-Jガイドラインのショウルーム的役割を担うべく医療機関を中心とした見学者を受け入れた。
  3. 相互運用性に興味を抱いた施設に対し、IHE-Jガイドラインの採用を促すことで、健全な情報システム市場の育成と、IHE-Jの普及に役立つことに寄与した。
  4. しかるに、医療界におけるIHE-Jの普及状況や相互運用性への理解を鑑みた時、これら諸点の達成は、「実運用をスタートさせることでIHE-Jが十分臨床稼動レベルにあることを証明するため、IHE-Jの有用性検証に必要な最低限の実装が完了した状態にすぎない。」との見方もあり、理想には程遠いとも言える。

本プロジェクトは今後に向け、現在放射線部門に存在する非IHE-J部分について相互運用性確保を推進し、システム全体が相互運用性の成果を一括利用できることを可能とすると同時に、放射線部門で培ったノウハウを、放射線部門以外への横展開としても利用できるよう、共通して実装可能な技術(言い換えれば汎用性が高く広く採用可能な技術)の中から、臨床に無理なく応用可能な方策の選択に留意しながら、検討を進める必要があると考え、本年度のさらなる実証を進めることとした。