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第II編 基本計画
1.1 放射線部門における相互運用性完結を目指した実装について

当センターでは、経済産業省による平成16年度先導的分野戦略的情報化推進事業(医療情報システムにおける相互運用性の実証事業)において、「IHE-Jを用いた相互運用性に関する放射線部門を題材としたショウルーム型実証事業」を実施しており、放射線オーダの発行に由来する一部の連携については、IHE-Jガイドラインに基づく相互運用性を実現している。

しかし、図1.1に示すとおり、放射線部門における情報連携には、数多くのパターンがあり、情報の発生場所や連携タイミング、連携先が多岐に渡る。

また、特に現在、IHE-Jとして実装され成果が報告されている連携は、主に各臨床科の医師が放射線領域の検査オーダを発行し、受付事務が処理すると共に、診療放射線技師が撮影を行い、最終的に放射線科の医師が読影を行うとのシナリオに基づき、オーダ内容や実施項目がいわゆる「情報下流側」となる報告書作成システムまで、円滑に連携するように設計されているに過ぎない。

現在実装されているHL7系の情報連携としては、

(1)JAHIS放射線データ交換規約に基づく、SWF統合プロファイル・PIR統合プロファイル準拠のOrder Placer→Order Filler間の情報連携。
(2)同規約・同統合プロファイルを遵守した形で実現した、Order Filler→Image Managerへの情報連携。
(3)同、Order Filler→Report Managerへの情報連携

*注:
平成16年度に実証したSINRについては、臨床稼動環境への移行を断念している。この理由として、放射線科における画像報告書作成のワークフローとSINRの概念が一致せず、臨床医の要求を実現できなかったためである。結果的にこの報告から、RWFの検討を行うに至っており、相互運用性検討の一助となったと考えている。

などがあり、同DICOM系の連携としては、

(1)一部のOrder Filler→Acquisition ModalityにおけるMWM連携の内、患者基本情報に限ったもの。
(2)Acquisition Modality→Image Manager/Image Archiveへの画像保存。
(3)Image Manager/Image ArchiveとImage Display間のCPI統合プロファイルに基づくGSPSの保存を含む画像を中心としたオブジェクトの連携。

などが、主なものとして構築されている。

連携項目において、下流への情報受け渡しが中心となり、それ以外の項目が実装されていない理由は、平成16年度の事業開始時に、国内向けの臨床適用に対する検討が終了していた項目が少なかったことや、データ交換規約の未整備などが主因としてあげられる。
(連携項目の図については、第Ⅰ編の3に掲載した図3.1を参照のこと。)

しかし、放射線部門として連携が必要な情報は、各科の医師の指示が、下流側のシステムに渡ればよいと言うものでは当然なく、放射線部門内で発生した情報や、画像診断報告書(以下:レポート)の他、最大の連携情報となる検査結果(画像そのもの)など、上流側への情報の戻りも含めた、全ての情報連携が円滑に動く必要がある。

本事業の使命として、今後IHE-Jを検討する施設が、埼玉医科大学と同様の仕様案を提示すれば、「業務上必須である連携の大部分が相互運用性に基づく仕組みを用いて実装可能である」と言えるよう、少なくとも放射線部門における情報連携の完結を目指すべきだと考えた。

ただし、本事業により全ての臨床連携を実証することは、言うまでもなく困難である。よって、施設内における臨床現場の要望事項を調査し、現場が実現して欲しいと願う要求として上位に存在した、次の項目についてIHE-Jガイドラインに準拠した実証を実施した。

(1) 外部医療機関からの画像取り込み
外部医療機関から提供された画像を、PDI (PDI:Portable Data for Imaging)統合プロファイルに基づき、自施設に取り込む場面を想定し、オフラインでの情報連携を実現した。
【理由】近年、外部の医療機関から、データが持ち込まれるケースが多く、対応に苦慮しているケースが施設内外で散見されたため。

(2) レポートワークフローへの対応
RWF統合プロファイル(RWF:Reporting Workflow:IHE-Jの統合プロファイルの一つ)に準拠することで、現場のワークフローにより近いトランザクションを用いた、報告書作成の仕組みを実現(実証)した。
【理由】過去の事業で、放射線科医のレポート作成業務について、SINRによる相互運用性の確保を検討したが、臨床的要件を満たせずに、ローカルな実装に戻した経緯がある。その後、RWF統合プロファイルが提示されたため、本事業ではRWF統合プロファイルによる実証を実施した。

(3) 画像・レポートの電子カルテ配信
XDS-iに記載された、WADO (WADO:Web Access to DICOM Persistent Objects)技術を用いて、電子カルテとの汎用連携技術を確立する。
【理由】施設内の要望としてかなり高いレベルにあったのが、電子カルテへの参照画像配信であった。
本事業では、XDS統合プロファイルにおける、オブジェクト配信モデルについて、ebXMLレジストリを用いずに電子カルテのデータベースで代用することで、施設内における多くのオブジェクトが容易に電子カルテへ連携可能と考え、汎用性の高いオブジェクト連携のモデルとして、当施設からの提案事項を含めた実証(実装)を行った。

(4) Order Filler→Modality間におけるJJ1017コード連携
国内初のJJ1017(JJ1017:HIS,RIS,PACS-モダリティ間 予約,会計,照射録情報連携 指針)(Ver.3.0)モダリティ連携を行った。
【理由】上記指針については、過去の事業において情報システムへの実装を行ったが、市販モダリティにおいて、同コードを理解しプリセット条件をマッピング可能なシステムが存在せず、事実上検査情報の連携が行えなかった。本事業では、JJ1017コードを利用し、モダリティへの検査情報連携を実現し、JJ1017コードや作業自動化の推進に資した。