3.3.1 背景
放射線部門における、Acquisition Modalityのデジタル化が進んだことにより、画像をImage Manager・Image Archive(PACS)に収容し、読影診断に利用するなど、有効活用する施設が増えている。
また、画像診断報告書(以下レポート)の電子化も進んでおり、Report Repositoryに蓄積・保存することで、検索や電子配信が可能な環境が整ってきた。
本来、画像やレポートなどの検査結果に関するオブジェクトを扱うシステムは、電子カルテ上からオンデマンドな検索や表示が行える環境を目指して構築されるべきで、良好な連携に向けた相互運用性の要求はかなり高いレベルとして存在するシステムである。
しかし、現段階においては、施設内のこれらシステムを前提とし、電子カルテから必要なオブジェクトを参照するための確固としたIHE-Jガイドラインは存在せず、各施設が独自の手法で、千差万別の構築を進めているのが現状である。
今回我々は、IHEにおけるITIの中で定義されている、WADOを含めたXDS-iのフレームワークを検討することで、XDS-iが施設内の連携にも適用できると考え、画像の配信・レポートの配信にWADOの実装を行うこととした。
本実装では、WADOにおける汎用的特長を利用し、画像・レポートの区別無く、全く同じ技術的枠組みで、電子カルテ側から必要な情報オブジェクトの取得が可能なインターフェースを構築した。
なお、現状のテクニカルフレームワークには記載がないものの、電子カルテ上で必要としているオブジェクトが、取得可能な形でサーバ上に存在する(届いた)ことを、電子カルテの利用者側が把握可能な仕組みがないと、臨床利用に耐えられないと判断し、これらステータスの連携が必須と考え、画像・レポートの各サーバから、電子カルテに対し、進捗を通知する仕組みを、IHE-Jの枠組み(DICOM・HL7規格利用)の中で、独自に提案した。
3.3.2 実施内容
電子カルテ側から、単一の技術基盤に基づいたオブジェクト(画像・レポート)のオンデマンド参照表示を可能とした。
技術的には、電子カルテ側で表示している患者の特定オーダ画面から、URL連携可能により、当該オーダに対応したオブジェクトを指定して、取得可能な実装を行った。
なお、DICOMオブジェクトに相当するコンテンツを表示するための仕組みは、電子カルテの機能とはせず、オブジェクトを配信する側の機能として想定した。これにより、電子カルテが参照するシステムが何であっても、十分な機能と共に画像の表示が可能となるシステム構成を実現出来る。
ただし今回の実装では、画像表示のための仕組みとして、汎用のWebブラウザ等を想定した。
(具体的には、電子カルテから画像及びレポート配信用のWebサーバを呼び出す仕組みと電子カルテ側でURLをデータベースに格納する仕組みを実装した。)
また、対象サーバからのオブジェクト存在(到着)に関するメッセージを受け、オブジェクト取得のトリガ操作(電子カルテ上における対象オブジェクト生成を指示したオーダに関連した画面上のボタン表示の操作)が可能(アクティブ化)となるよう、画面改造を実施した。
画像サーバ側には、URL連携に起因したWebアクセスにより、DICOMオブジェクト(画像)が呼び出される仕組みを構築した。
レポーティングシステム側にも、URL連携に起因したWebアクセスにより、DICOMオブジェクトの内容をText/HTMLで提供する仕組みを構築した。(現在稼働中のHTML連携を再構築し、URLを渡す仕様に変更。ただし、表示形式は、従来のままHTMLとした。)
オブジェクト存在(到着)に関するメッセージ連携としては、Image Manager・Image Archiveにおける画像受信完了およびReport Managerの読影完了(Verification・Completed)のタイミングをOrder Filler経由でOrder Placerに通知する仕組みを提案する所ではあるが、Order Fillerの実績関連トランザクションが十分定義されていないことから、次年度以降の策定に期待し、今回はOrder Fillerの一部特定機能を分離した仮想Order Fillerとも言える、DICOM-HL7 GWを用いて、同様の連携を行った。
なお、仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)とImage Manager・Image Archive間、および仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)とReport Manager間はDICOM規格により通信する手法を策定した。
さらに、仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)とOrder Placer間は、HL7規格で通信する手法を独自に提案した。
(埼玉コンソーシアムで、今後の利用が見込まれるHL7により実装する。)
現実にはこの通信により、電子カルテデータベースへ、必要な参照オブジェクトのURLの元となる情報を連携させ、オブジェクトを指定の上、ブラウザを呼び出し引き渡した。
<策定予定の通知手法>
1、 Image Manager・Image Archiveは、画像受信完了のタイミングで、画像到着確認ステータスを仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)に送信する。
2、 Report Managerは、レポート作成の進捗にあわせてPerformed Work Statusの「Completed」(GP-PPS)を仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)に送信する。(参考:この部分はRWF準拠でもある。)
3、 さらに、レポート作成完了のタイミングでPerformed Work Status(Verification:Completed)を仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)に送信する。(同)
4、 仮想Order Filler(DICOM-HL7 GW)は、これらImage Manager・Image Archiveからの通信タイミングもしくは、Report ManagerからのPerformed Work Status通信のタイミングで、画像受信完了通知(HL7)または、レポート作成完了通知(HL7)をOrder Placerに送信する。
5、 Order Placerは、仮想 Order Filler(DICOM-HL7 GW)からの通信を受けて、画像参照ボタンもしくは、レポート参照ボタンをアクティブにする。
理想的にOrder Fillerは、Instance Availability Notification(MPPS)およびPerformed Work Status(GP-PPS)を受けて、ここからHL7の電文を生成し、OFに送信する必要があるが、今回の実装では稼働中であるOrder Fillerへの改造は避けた方法を選択した。
この理由として現在、将来に向けたOrder FillerからOrder Placerへの実績返信に関する技術検討が始まっており、あえて今回稼働中のOrder Fillerを改造するメリットが薄い(今後別の仕組みが標準として提案される可能性がある)ことがあげられる。
なお、HL7の電文仕様は調整中により、最低限含むべき情報として、患者情報・オーダ番号(HIS発行)・Instance UID(Study Instance UID)などを盛り込んだ。(本仕様の詳細については提案案件として別述する。)
3.3.3 稼動試験
(1)稼動試験
電子カルテから汎用技術であるWebアクセスを用いて、画像・レポートのオブジェクトを呼び出し、表示することで、参照可能な環境を提供した。
なお、オブジェクトの利用が可能となったことを、電子カルテ上で認識可能な拡張を提案した。
(2)検証方法
外部の有識者を交えて以下の動作について実験を行い、指導・助言により、本実証上の改善点がないか検討した。