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第III編 実施内容
4.1 本事業から見えてきた技術的な二極化

本事業では、過去の実証事業と比較した場合、その事業性質の違いから、事業の遂行が非常に容易となった点と、非常に困難となった点が存在した。

この二点については、二極化に近い状況であり、今後のIHE-J普及に向けた、対応が必要と考えられる。

4.1.1 事業の遂行が非常に容易となった点

本事業における最大の特徴としては、我々が「IHE-Jのガイドラインに基づいた」相互運用性の実現を目指していることである。この点が、本事業のような情報システムの構築や拡張に対し、大きなメリットを生み出している。

そもそもIHE-Jでは、テクニカルフレームワークと呼ばれる、いわゆる公開仕様書が既に存在し、ユーザもベンダも同様の完成図を確認可能である。当然、お互いの考えや意図を伝えるための調整会議が、かなり削減可能である。

また当施設では、過去のIHE-Jガイドラインを用いた相互運用性の実証事業によりIHE-JにおけるSWF統合プロファイルやPIR統合プロファイル、CPI統合プロファイルの他、今回の事業とも関連のある、RWF統合プロファイルの一部が既に実装されている。そのため、基本的な足回りの整備は完了している状況で、今後もIHE-Jのガイドラインにさえ基づいていれば、システムの追加や拡張が非常に容易な環境が既に構築されているといえる。

今回構築した、IHE-J(IHE)の統合プロファイルとしては、SWF・PDI・RFW・XDS-i(注意:XDSの統合プロファイルそのものの実装ではない。同プロファイル中に記述されている、WADO技術を切り出して、施設間連携の概念を施設内にダウンサイズした場合の有用性を確認した。)の4プロファイルであるが、どれも前述のテクニカルフレームワークが用意されており、接続や連携部分については、短期間で全く問題のない構築が可能であった。

この「容易さ」を示す事は、尺度的に単位が曖昧かも知れないが、「2時間程度の打ち合わせを2回実施しただけ」で、後はベンダ間の電子メールにより全ての調整が完了している。

4.1.2 事業の遂行が非常に困難であった点

本事業における最大の特徴としては、我々が「IHE-Jのガイドラインに基づいた」相互運用性の実現を目指していることである。この点が、逆に今回の事業における最大の問題であった。

問題の主因は、各統合プロファイルにおいて、IHE-J委員会内の検討が、一部で完全には終了していない点にある。当然、テクニカルフレームワークは、IHEが提案した内容のままである部分が存在し、IHE-Japanが担当する、「国内における情報システムの現状やワークフローへの対応」が完全とは言えない状況が発生した。つまり、これまではIHE-J委員会が検討を完了した統合プロファイルについて、実装を進めてきたため、メリットの部分のみが先行した。

しかし今回のように、検討が完全に完了しない統合プロファイルについて、実装を行おうとするものなら、たちまち仕様調整地獄に入り込んでしまうのである。当然その状況で、「しかしIHE-Jを用いて実装する」となれば、IHE-J委員会が実施している臨床応用のための詳細検討までが、事業範囲になってしまう。しかも、我々が良かれと思う実装が国内の標準となる保証がない。

本事業では、可能な限りIHE-Jの各委員会と連携を深め、協調しながら実装を進めてきたが、臨床稼動させるためには、結果的に本事業から提案せざるを得ない技術仕様が存在し、ある意味「拡張」を含んだ実装となってしまった。

当然、拡張部分についてのテクニカルフレームワークは準備されていないため、IHE-Jから少しでも離れる部分では、ゼロからの出発となった。

この時、好き勝手な実装仕様により、ローカルな構築が行えれば、ある意味自施設のその場限りのソリューションとしては、楽なのかも知れないが、あくまで、IHE-Jにこだわった結果として、各ベンダにも多くの御苦労を強いる結果となった。もちろん、本検討の成果は、IHE-Jのしかるべき委員会にフィードバックする予定(一部についてはドキュメントを提出済み)である。