本事業の遂行により、IHE-Jガイドラインや相互運用性という概念の普及・啓蒙は、一定の効果をあげているように思える。
経済産業省の相互運用性に対する取り組みの一環として、国内で初めての臨床稼動を果たした医療機関として、可能な限り情報の公開やIHE-J稼動の実態に関する質問に答えてきた。また、実証フィールドの提供からトライアルまで、私学としては、最大限の努力を重ねてきた自負はある。
しかし、IHE-Jの様なガイドラインで解決しなくてはならない(解決可能な)問題点を抱える医療機関の数は、減るどころか増える一方との見方もある。
この理由として、IHE-Jに対する誤解や誤認が未だ解消されていない現実がそこにある。特に、医療における意志決定者となる経営権を持つ医師や、医療情報担当責任者の、IHE-Jや相互運用性に対する意識の改革を、これからの主軸に据えて施策を織りなす必要がある。
それと並行して、医療における情報連携の再検討とも言うべき、統合プロファイルのさらなる検討(日本への適合)を進める必要がある。
現状の統合プロファイル検討の完了状況は、新築の家にたとえると、何本かの柱が立った状態である。当然、これから重要な棟上げや、屋根を葺く作業が待っている。カーテンや照明器具は、各医療機関の好みに任せるとして、最低限雨風が防げるだけの屋根や壁くらいは、用意しておきたい。
そのためには、IHE-Jの各委員会が、必要な臨床検討をより広い範囲で、より迅速に、より正確に行えるような枠組みの構築を望みたい。
特に、我々のような医療機関が、統合プロファイルを利用することで得られるメリットは計り知れない。逆に、統合プロファイルのない実装に直面するとたちまち、疲弊してしまう。
全ての医療機関が、IHE-Jガイドラインによる、仕様策定や連携調整の煩わしさから解放される至福を享受するために、統合プロファイルや情報の交換規約に関する整備を急ぐべきであると考えた。
本事業の最大の成果は、IHE-Jガイドラインが実際に有用で、なおかつ臨床稼動に全く問題のないことを証明したと同時に、リアルなサンプルとして、多くの医療機関の関心を集めたことと、統合プロファイルの検討という人的リソースに限界のある作業において、現場からまさに規格の利用方法に対する提案が生まれたことである。現場の提案が、プロファイルの検討に生かされ、ひいては臨床の要求にあった国際的提案を主導的に本事業から行える先駆事例となることを心から願ってやまない。